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イタリアが生みだした膨大な美術の精華をコンピューターで検索、活用できるようにデータベー
ス化しようというのである。彼がめざしているのは、古代ローマの遺物から現代イタリア芸術に
いたるあらゆる美の所産を一堂に網羅し、その科学面から技術面、文献上の資料までをくまなく
記載した彼の好む言葉でいうなら完璧な”医学診断書” のようなものだった。コッレアーレは
早くもイタルシエールというテクノロジー企業を抱きこみ、このアイディアを商業的に実現する
ためのテスト版づくりの資金を捻出していた。目下のところはカピトリーニ美術館が収蔵する絵画
約二百点の知りうる事実をことごとく記録し、それをカタログ化するという段階だった。館蔵
品のほんの一部にすぎないが、コッレアーレがいうように、何事も一歩からはじまるのだ。
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